東京マラソン財団は、「走る楽しさで、未来を変えていく。」というミッションを掲げています。ランニングには人と人とのつながりを強め、よりよい社会をつくっていく力があると信じ、ランニングスポーツの可能性を拡げ、新しいライフスタイルづくりに取り組んでいます。
その取り組みの一つに、「誰でも、自分らしく参加できる大会づくり」があります。2027年に20周年を迎える東京マラソンでは、「Duo Team(デュオ・チーム)」という新たなカテゴリーとして正式に実施することを目指しています。Duoランニングは脳性まひなど永続的な身体障がいにより自力での歩行・走行の困難な人が安全にカスタマイズされた車いす、「デュオ(Duo)バギー」を使って走る新たなランニングスタイルで、「Duo Team」とは「デュオ(Duo)バギー」に乗った人(ライダー)と、バギーを押す人(プッシャー)が2人1組で参加できるカテゴリーです。
Duo Team本格導入を前に東京マラソン2025から試行実施を始めており、初年度は海外から4チームが参加し、全チームが完走を果たしています。
■一般にお披露目された、デュオ(Duo)バギー
オーモンドさんは贈呈式で、「このバギーは、大会に出場させてくださった東京マラソン財団をはじめ、出場実現のために尽力くださった多くの皆さんへの感謝の思いの象徴です。さらに、日本のチームといつか一緒に東京を走りたいという希望も込めています。」と寄贈に至った経緯を説明。
つづいて、Duoランニングについて、「ランニングは私の人生を想像もしなかった形に変え、さらに二人で走るDuoランニングは心までも変えてくれました。共生社会は理念ではなく、体験です。誰もが所属する機会を与えられたときに、何が可能になるのかを、私たちがともに走る姿によって世界に示します。Duoランニングには家族を結びつける力もあります。風を感じ、スピードや競走を楽しむことですべての障壁は消え去り、残るのは絆や愛、笑顔、そして特別な時間を共有する高揚感だけです。夢は実現します。私がアンドリューとこの挑戦を始めたとき、まさか世界の反対側まで旅をすることになるとは思ってもいませんでした。」と自身の経験と思いを披露したオーモンドさん。
「このデュオ(Duo)バギーが次世代の人たちに勇気を与えるとともに、いつか日本初のDuo Teamが東京のコースに挑戦するきっかけとなることを願っています。アリガトウゴザイマシタ。」と結びました。
■一般来場者も、デュオ(Duo)バギーを体験
操作性については、「曲がり角や下り坂が難しい」といった感想も聞かれ、練習が不可欠のようですが、「楽しかった」「こんな走り方もあり!」など、ランニングの新たなスタイルや可能性の広がりに気づいていただけたようです。

明治公園には18日(土)の体験コーナーで、オーモンドさん寄贈の1台に加え、別のもう1台も用意されていました。このデュオ(Duo)バギーは、「学校法人岐阜済美学院研究チームTWOGETHER」が所有するバギーです。
当財団ではスポーツを起点に後世へのレガシーを遺そうと「スポーツレガシー事業」に取り組んでおり、その一つに「たまご育てプロジェクト」があります。子育て支援や障がい者の自立支援など社会課題の解決に向けた、新しくてユニークな取り組みにチャレンジしている団体を対象に募集・支援するもので、2025年度の対象団体に選定されたのが、「TWOGETHER」でした。
「TWOGETHER」チームは同法人の中部学院大学と同短期大の学部教員6名で構成され、多様な人々の多様なスポーツや多様な生の実現に取り組む研究チームです。Duo Teamの普及・発展と子どもを専用のベビーカーに乗せて走るバギーランの実践という2つを柱に研究や啓発活動を進めています。
同チームの東海林沙貴先生は、「Duo Teamというランニングスタイルを知り、まさに私たちが目指す多様なスポーツの在り方を具現化したものの1つであると共感しました。より多くの人にDuo Teamのようなスポーツの形を伝えたい。挑戦するチャンスが誰にでもある社会への一歩を進めたいという思いのもと活動しています。」と話し、「まずは、地元の岐阜県内で試乗会などDuo Teamを知ってもらう機会を増やすこと。そして、日本第1号チームを作って、東京マラソン2027に参加すること」を目標に活動しているそうです。
Duo Teamという新スタイルを広めることには参加者を増やすことだけでなく、他のランナーの間にも認知を広め、大会出場の際に接触などの危険性を低くするという目的もあります。「当事者だけでなく、周囲の人の理解も欠かせません」と強調していました。
後藤健太先生も、「障がいのある人のランニングの一つの形として可能性を感じています。レーサー(競技用車いす)を自分でこぐパラスポーツもありますが、Duoランニングもパラスポーツの選択肢の一つとして認知させたいです。一般のランナーたちに混ざって一緒に競走する機会も楽しんでほしいですし、もっともっと広めていきたい。」と活動への意気込みを語っていました。
■子育て中でも"走る楽しさ"を――親子で楽しむバギーラン体験

■デュオ(Duo)バギーで、陸上の聖地を疾走!
試乗者の中には、頚髄損傷により数年前から電動車いすを使用しているという東京都内在住の40代の男性の姿も。オーモンドさんがプッシャーを務め、かなりのスピードで国立競技場のトラックを駆け抜けました。「風を切る感じが気持ちよかった。元々ランナーだったので、その当時の感覚を思い出しました。電動車いすの速度では風を感じることはないし、久しぶりに流れる景色を見られて嬉しかった。いつかDuo Teamで参加してみたいと新しい可能性が広がった思いです。」と笑顔で話していました。
副島正純 車いすレースディレクターも試乗。自身でこぐレーサーでパラリンピック出場経験もあるだけに、最初は操作を他者に任せることに恐怖感もあったようですが、試乗後は、「これでマラソンを走ったら、眠ってしまうかも。」と、乗り心地のよさを実感。「新しいランニングとしても、面白い」と、その可能性にも期待を寄せていました。
「やってみたい」「走ってみたい」という思いは障がいの有無や年齢などに関係なく尊重されるべきであり、そうした思いを実現できることもインクルージョン、共生社会の大きな要素です。Duoランニングやバギーランは多様な人々の「走りたい」気持ちを実現する一つの選択肢です。当財団はその普及・発展にこれからも寄与していきます。

▲左から、大嶋康弘(東京マラソン財団)、副島正純(東京マラソン財団)、ロス・オーモンドさん
<ロス・オーモンドさんからのメッセージ>