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【レポート】ASICS presents もう一つのインタビューリレー!(ブラインドランナー・ガイドランナー編)

2025年5月29日

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 東京マラソン2025大会期間中の2月28日(金)、『VOLUNTAINER Meeting 2025~東京マラソン2025みんなでつなぐサステナビリティ~』で開催されたトークセッション「ASICS presents もう一つのインタビューリレー!」において、2016年リオデジャネイロパラリンピックに水泳日本代表として出場したパラリンピアンで、アシックスのブランドアンバサダーを務める一ノ瀬メイさんが登壇。視覚障がい者ランナーの町田宏さん、ガイドランナーの滝澤秀樹さんと対談し、ブラインドマラソンの魅力や視覚障がい者ランナーとガイドランナーの信頼関係などについて話しました。

■応募すること9回、ついに東京マラソン初参加

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――一ノ瀬さん、本日はよろしくお願いします。この会場の雰囲気はいかがですか?
一ノ瀬 私は水泳出身で、マラソンに出会って走るようになったのはここ2年くらいです。東京マラソンEXPOに来ることも初めてで、人の多さと、国も年齢もこれだけ多様な人たちが会場に集まるのはマラソンだからこそなのかなとすごく感じまし

――この会場にはボランティアさんも多いので温かさが感じられますよね。
一ノ瀬 はい。一昨年、東京レガシーハーフマラソンに初めて出させてもらったのですが、大会当日の雰囲気が本当に温かくてお祭りみたいで、走っている途中もボランティアの皆さんがすごく声をかけてくださって、めっちゃきつくても頑張れました(笑)。ありがとうございます!

――それではここでインタビューリレーの1組目をお迎えいたします。明日の東京マラソンにランナーとして参加予定の町田宏さん、ガイドランナーの滝澤秀樹さんです。よろしくお願いします。
一ノ瀬 胸についてる名前はあだ名ですか?

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町田 そうですね。私は楽器をやるので伴走クラブでは「ぎたあ」というあだ名で呼ばれています。伴走クラブではお互いに本名を知らない人が多いんですよ。

――そうなんですね。ではぎたあさん」こと町田さん、そして滝澤さんに色々とお話しをお伺いしたいと思います。町田さんはこれまで東京マラソンを走った経験はありますか?

町田 初めてです。9回応募して初当選でした。今回初めてONE TOKYOプレミアムメンバーになりました。ONE TOKYOプレミアムメンバーは抽選のチャンスがいくつかあって、プレミアムメンバー抽選は落選だったのですが、一般抽選が当選だったのです。
私は全盲のためスマホは音声で聞いています。マイエントリーのページを開くと「落選」と聞こえてきました。今回もだめだったか、と思いましたが続けて聞いていると、「落選先行エントリー」、「当選一般エントリー」と聞こえてきました。
「落選」を聞いた時点でスマホを閉じていたら当選に気づかなかったかもしれません。
最後まで聞いていてよかったです。

――滝澤さんの東京マラソンの経験は?

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滝澤 私は町田さんより1回多く、10回落選しています(笑)。ただ、伴走としては今回2回目になります。私も「ONE TOKYO」のプレミアムメンバーに入っていて、チャンスが「プレミアムメンバー」「都民」「一般」と3回のチャンスがあるのですが、私の場合はもう1回あります。伴走で呼ばれる可能性があるということで、4回チャンスがあると思っています。

■東京マラソンでSix Star Finisherにチャレンジ

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――今、手にお持ちいただいているもの(ガイドロープ)を紹介していただいてもよろしいですか?

町田 私は26歳で目の病気が分かって、だんだんと悪くなって、40歳で杖を使うようになって今は何も見えないのですが、50歳でマラソンを始めました。今、65歳です。伴走ではこのガイドロープを私が左手に持ち、滝澤さんが右手に持って走ります。私は「アキレス・インターナショナル・ジャパン」という伴走クラブに入っているのですが、本部はニューヨークにあります。毎年、ニューヨークシティマラソンにツアーで行っておりまして、私もマラソンを始めて3年目の2013年に初フルマラソンでニューヨークを走りました。3年走って感動して、その後も海外マラソンを続けて、ロンドン、ボストン、シカゴ、そして2019年にベルリンを走って、毎年応募していた東京はついに今年走れることになりました。完走できればアボット・ワールドマラソンメジャーズのSix Star Finisherになることできます。

――おめでとうございます!

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町田 それで背中にこのSix Star Finisher用のビブスをつけて走ります。

滝澤 町田さんのように今回Six Star Finisherを達成するというランナーは、アスリートビブスに「TODAY IS THE DAY!」、今日がその日だという意味の英語が書いてあるんです。これを見た人は応援してくれるのではないかなと思いますので、それを励みに頑張らないといけないなと思っております。

――東京マラソンに向けての想い、仕上がりなどはいかがでしょうか?

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町田 私はフルマラソンを27回走っておりまして、2回リタイアしているので、25回完走しております。つい最近ですと1月に鹿児島のいぶすき菜の花マラソンを走りまして、その時の調子がすごく良かったんです。タイムで言いますと、2017年のボストンマラソンでマークした4時間43分が自己ベストで、最近は5時間半くらいで走っているのですが、1月のいぶすきがすごく楽だったんですね。ペースが変わらずに、平均ペースで走って来れたのですごく今は調子がいいです。
しかしですね、一つ不安があって、去年4月にあおもり桜マラソンに出ようと思って夜に練習していたのですが、突然、私のふくらはぎを誰かがつかんだんです......

一ノ瀬 えっ!?

町田 それはね、肉離れだったんです(笑)。

一ノ瀬 あぁ、ビックリした(笑)。

町田 それで青森に行けなかったんですよ。だから、それが再発しないように気をつけながら走っていますが、他は万全なので楽しみにしています。

■二人で走るからこそ気を付けていること

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――滝澤さんはいかがでしょうか?

滝澤 今回は責任が重大で、私が途中でダウンすると大記録が達成できないので、この1週間はアルコールを控えて体調を整えております。

――ただ、先ほど町田さんは滝澤さんのことを「すごく速いから」とおっしゃっていました。

滝澤 やはりマラソンはその日の体調が非常に大きいですからね。スピードに関しては町田さんよりも多少速く走れますが、慎重に行きたいと思います。

町田 速い人は私の伴走をすると、一人で走るよりも疲れるそうです。サブ4の人が5時間半くらいで走ると、かなり疲労があるそうです。

滝澤 ということで東京マラソン財団さんにもお願いしているのですが、二人での伴走を認めていただけないかというお願いを、絶えず私たちの障がい者伴走チームは色々な形で要望を出させていただいております。

一ノ瀬 パラリンピックのマラソン競技では中で伴走者が交代とかありますよね。

滝澤 そうですね。

――今回は申告があれば2名の伴走者が可能になりました。

滝澤 本当にありがとうございます。

一ノ瀬 すごーい。

――一ノ瀬さんからお二人に何か質問はありますか?

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一ノ瀬 私もこの間、パリパラリンピックのブラインドマラソンを現地で見ていたのですが、フィニッシュの時に伴走者が前に出てしまって失格になった選手がいました。二人で走っているからこそ気を付けていることはありますか? また、二人で走る時に追加されるルールなどがありましたら、ぜひお聞きしたいです。

町田 伴走者はあくまでもランナーである私が自力で走るのを補助するだけなので、引っ張ったりしたらいけないですね。途中で伴走者が前に出ることはあるのですが、フィニッシュの時は必ず後ろにいなければいけません。あと、伴走は本当に大変なことで、マラソン大会ってだいたい後半くらいになると早く前に行っていたランナーが歩いてしまうんですよね。東京マラソンくらいの規模になると歩いているランナーも前方にたくさんいて、私はずっと同じペースで走っているので途中で歩いている人たちを追い抜くことになるのですが、それがもう右・左、右・左に行きながら、場合によっては給水したりもしながら走るので、伴走者はすごく負担が大きい。なので、いつも感謝しています。

一ノ瀬 やっぱりコミュニケーション、信頼関係があってこそなんだなぁと、今のお話を聞いて思いました。

町田 そうですね。あと、「アキレス」という伴走クラブは代々木公園で練習をしています。第2、第4、第5の日曜の午前中にやっているのですが、ボランティアの方たちが伴走ボランティアとして来てくれるんです。最近ではアメリカンスクールの高校生の若い子たちが来てくれるようになりました。そうすると、私の方でも視覚障がいというものを話せるんですね。そうすることでお互いの理解ができるようにもなりました。あと、陰の立役者と言いますか、練習の時もエイドをやってくれる人がいます。冬場だとその人たちは走らないから体が冷えて寒いわけですが、それでも一生懸命やってくれます。そういう人たちのおかげで、私は楽しく走れています。

一ノ瀬 チームワークですね。

滝澤 大会当日もエイドや給水でたくさんのボランティアの皆さんが参加されると思いますが、特にレースの後半は声かけとリアルなエネルギー補給が非常に力になりますので、感謝しながら走らせていただいております。

■障がい者と伴走者の国際交流の機会

――ボランティアの方々のお話も出ましたが、どんなお声がけが嬉しかったり、力になったりしましたか?

町田 例えば、ニューヨークでは「アキレス」が有名なので、みんな「GO! アキレス」って声をかけてくれます。それで私の名前は宏なので「HIRO」と貼って走ると、周りの皆さんが「HIRO!」って名前を呼んでくれるので、それが嬉しかったですね。やっぱり、応援に応えると逆に苦しい時もあるのですが、でもそれに応えた方がかえって気持ちが切り替わって楽になることもあるんです。今回は応援の声をいただいたら、自分も声を出して、本当に楽しんで走りたいと思います。

滝澤 どんな声かけでも非常に嬉しいと思っています。特に伴走をさせていただいていますと、沿道の方のほか、ランナーからも声かけをいただいて、「頑張ってね」という単純なものから、自分では全然思っていないのに「カッコいいですね!」ということも突然言われたりしまして、そういった思いがけない声かけも非常に嬉しいなと思います。ですので、思ったことを伝えていただくと非常に嬉しいなと思います。

――応援は大きな声で言っていただきたいですよね。二人で息を合わせるために、特別に何かしていることなどはありますか?

町田 もう付き合いは長いので、特に何かやることはないですかね。

――もう"阿吽の呼吸"という感じでしょうか?

町田 そうですね。

滝澤 はい、そんな感じですかね。伴走する場合には背格好、歩幅、ペースが合うことが一番重要なのですが、幸いにして町田さんとは背格好がほぼ同じで自然と歩幅も合いますので、そういう意味では町田さんは伴走しやすいと思っています。

町田 実はですね、今回私が東京マラソンに当選して、伴走者は誰にしようかなと思っていた時に滝澤さんに聞いてみたら、すでに10.7kmの方で先約が入っていたんですね。それで色々と考えて、どうしても滝澤さんしかいないんだということになってお願いして、先約の方に譲っていただいたんです。

一ノ瀬 滝澤さんの取り合いですね(笑)

滝澤 おじさんもたまにはそういうこともあります(笑)。伴走は難しそうと思っている方も多いかもしれませんが、ランニングでなく、ウォーキングの伴走、この場合「伴歩」という方が正確かもしれませんが、そういう伴走もありますので、ぜひ伴走仲間が増えてほしいと思っています。ところで、「アキレス」は国際的な団体で、私たちはその日本支部で活動しております。東京に拠点があるのですが、大阪にある「長居わーわーず」という伴走クラブとも姉妹関係にあります。今回、東京マラソンには「アキレス」所属の世界18カ国から40人くらいが集まりますので、障がい者と伴走者の国際交流の機会にもなっています。

――そうした国際交流の場が広がっていくのもいいですよね。

町田 そうですね。それで今回、私は日本の視覚障がい者でおそらく初のSix Star Finisherで、アメリカから来られた24歳で自閉症の男性も自閉症ランナーでおそらく最年少のSix Star Finisherではないかということです。その24歳の方はお父さんが伴走して、お母さんが後ろからついてくるので、お母さんもSix Star Finisherになるんですよ。親子でSix Star Finisherなんて素晴らしいですよね。

――本当に素晴らしいことですよね。まずは拍手をお送りして、本番はぜひ楽しんでいただきたいと思います。町田さん、滝澤さん、本当にありがとうございました。最後にひと言、何かありますか?

町田 私は今、タイムを気にせずにゆっくり走っているのですが、心拍数を上げないで走っていますので普段の練習は全然苦しくないんです。私も50歳から始めましたし、決して苦しいものではありませんので、マラソンを始めていない方はぜひ始めてみるのもいいのではないかなと思います。また、私の走りで少しでも障がい者のマラソンを見てみようという気になってもらえるといいなと思って走りますので、よろしくお願いします。

滝澤 本当にこういう機会をいただきましてありがとうございます。これをきっかけに伴走に興味を持っていただいて、色々な形で少しでもご参加、ご協力いただければ嬉しく思います。

――一ノ瀬さんからも感想をいただければ。

一ノ瀬 もう、カッコいいの一言です。私はハーフマラソンでヒーヒー言っていたので。でも、マラソンはきつくないとか脈を上げていないとか、50歳から始めたとか言われたら説得力しかなくて(笑)、私もこれからますますランを頑張りたいと思いました。ありがとうございました。

【大会後】

東京マラソン2025で町田さんは、無事完走しSix Star Finisherとなり、感想を以下の通りお寄せくださいました。

町田さんより:
多くの方のご支援でシックススターフィニッシャーになることができました。
当日は天気も良く応援に背中を押されて楽しく走れました。
東京マラソンは落選の連続でしたが、最後に残ったのも結果的にはよかったです。
これからもできるだけ長く走り続け、スポーツのすばらしさを発信して行きたいと思います。

画像には、アボット・ワールド・マラソン・メジャーズの背景幕の前で笑顔を見せる2人の男性が写っています。.jpg画像には、マラソン大会の様子が写っています。  手前には、ランナーたちが道路を走っている様子が捉えられています。男性2人が並んで走っており、蛍光色のグリ.jpg

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